オンライン読書会:N.T.ライト『シンプリー・グッドニュース』第2回(参考資料)

4月27日(月)分の読書会の参考資料です。21:00からZoomの会議室で行います。参加ご希望の方はTwitter、このページのコメント欄からお知らせください。お待ちしています!

「福音」とは?

「キリスト教とは、とりもなおさず、よい知らせなのです。それは、あることが起こり、その結果として世界が一変したという知らせ(ニュース)なのです。それこそが、使徒パウロ-王から任命されたコミッショナーであるパウロ-が宣べ伝えたものです」pp. 31 f.

 「福音」”εὐαγγέλιον”(エウアンゲリオン、単数形)とはギリシア語で「よい知らせ」という意味である。 この言葉はヘレニズム世界で一般的に使われていた用語であるが多くの場合、複数形”εὐαγγέλιοα”(エウアンゲリア、複数形)が用いられた。複数形のエウアンゲリアは「皇帝の即位」、「戦争の勝利」、「よい知らせに対する報酬」を意味し、しばしば皇帝崇拝と結びつけられた。聖書がエウアンゲリオンと単数形で述べる時、それは要約すると、イエス・キリストの復活によって真の神が明らかにされたのだ 、 というただ一つの内容を含意していると理解できるのではないだろうか?

福音は「アドヴァイス」ではない?

「パウロが人々に語り聞かせた出来事は、それによって生じた変化に対応するためには、生き方全体を変えざるを得ない出来事だったのです」p. 38

 ライトはパウロが語った「福音」を、ほぼ「イエス・キリストの復活という知らせ」(要約)に限定しているように思われる(少なくとも1、2章では)。パウロ書簡において、この理解は正しい。ライトは福音とは倫理やアドヴァイスではないと繰り返し強調する。私は現代の福音派が語る「福音」については詳しくないが、私自身もそう解釈するように、リベラルな傾向があるキリスト教では「福音」は「差別からの解放」というような文脈で語られることがあるのではないだろうか?

 新約聖書中、必ずしもイエスの復活を含意しないように読める箇所がマルコ福音書1:15(13:10、14:9も参照)に書かれている。

「14 ヨハネが捕らえられた後、イエスはガリラヤへ行き、神の福音を宣べ伝えて、15 『時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて、福音を信じなさい』と言われた」(協会共同訳より引用)

  おそらく、福音書記者自身が書いた文章では復活の場面は描かれなかったと多くの聖書学者によって推定されている。 私たちにとって、イエスの復活は「既知の」出来事であるが、マルコ福音書の当時の初読者たちにとっては自明の事柄ではない。少なくとも、彼らは「イエスの地上での行い」(先に述べたような「差別からの解放」)を「福音」と感じた可能性はあるだろう。ライトの著作を読み進めていくうちに明らかになるのかもしれないが、私が要約した「『イエス・キリストの復活によって』真の神が明らかにされた」という内容だけが新約聖書の福音ではないのではないか?というのが、現在のところの疑問点である。(マルコが語った「福音」は本当はイエスの復活を意味するという可能性ももちろんないとは言えない。それは隠されたいた事柄なのかもしれない。W.ヴレーデのいわゆる「メシアの秘密」?)

愚かな知らせ?恥ずべき知らせ?それともよい知らせ?

 十字架に付けられたメシア、という主張はユダヤ人にとってもギリシア人にとっても奇異な主張。それは躓きであり、愚かな主張とみなされた。一般的に「救い主」とは権力や軍事力を持った力強い存在と考えられるのが普通である。しかしパウロは十字架に付けられたイエスこそが神が示した真のメシアであるという。そしてこの主張こそがパウロの「福音」の核心だったのである。ライトは次のように述べる:

「パウロは神に関する聖書の言葉を使い、それが聴衆の頭の中では皇帝に関連する言葉遣いと共鳴することを承知の上で、それをイエスのメッセージに当てはめたのです」p. 62

 以上、第2章について要約、疑問点をまとめました。続きは読書会で討論しましょう。

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 今回はパウロの主張の核心について見ていきました。次回は3章「王なるイエスについての驚くべき知らせ」です。担当は爽歌牧師です。お楽しみに!

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(参考)本文中で聖書個所が明示されていない箇所:

イザヤ40:9「高い山に登れ、良い知らせをシオンに伝える者よ」

イザヤ52:7「なんと美しいことか、山々の上で良い知らせを伝える者の足は。彼は平和を告げ、幸いな良い知らせを伝え、救いを告げ、シオンに『あなたの神は王となった』という者の足は」

協会共同訳より引用

担当:e.p.s( Twitter:@eps27196820

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