メリー・クリスマス。
ちょっと遅れてきた感は否めないが、プロテスタントでは12月25日から1月6日までがクリスマス(降誕節)なので、実は今がクリスマス・シーズンのど真ん中である。
さて、イエス誕生を描く動画は多くある中で、最近注目したのは、この“The Christ Child”というショート・フィルムである。
聖書の記事、当時の言語など、綿密・詳細にリサーチを積み重ねて作られたものであることは、メイキング・ビデオでも説明されていた。
中でも、マリアがイエスを出産したのは、馬小屋でも洞窟でもなく、親戚の民家の馬屋であったという説を採用しているところが、この映画の他の多くのクリスマス関連の動画とは違った特質だと思う。
ルカによる福音書における「カタリューマ」という言葉は、実は「宿屋」ではなく「客間」であること。当時の旅人はどんな客がいるかわからないので、特に妊婦を連れたヨセフがそのような場所に入るわけがなく、知人や親戚の家を訪ねるのが普通であること。そして、もしベツレヘムがヨセフの故郷なら親戚くらいいるだろう。
ただ、その家のカタリューマ(客間)には先客がいた。そこでこの親戚は、当時の民家では一般的な、家族の居室と隣り合った、家の入り口あたりの家畜のスペースに2人を招き入れたのである。
そして、その時代の「飼い葉桶」は木でできた箱のようなものではなく、石造りのものであった。そのこともこの映画できちんと描かれている。
この「カタリューマ」=「客間」については、大宮有博「すべての人が招かれる教会の予告編ー社会科学批評による解釈」(『福音と世界』2016年12月)でも指摘されている。
この名も無い小さな家の住人が示したホスピタリティが、イエスの生涯の始まりであり、それがキリスト教会の原点であるということが、ルカの訴えようとしていたことではないか、という解釈である。
ちなみにここに紹介したショート・フィルム“The Christ Chid”は、末日聖徒イエス・キリスト教会(いわゆるモルモン教会)によって制作されている。モルモン教会は非常に映像制作に力を入れており、ミュージック・ビデオなども含めて優れた作品も多い(中には聖書を題材にしたドラマ仕立ての道徳ビデオなど、疑問を抱いてしまうものもあるが)。
モルモン教の捉え方については諸説あるが、この映像作りのクオリティについては否定できないし、学ぶべきところも多い。
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